財産未分割の場合の相続税申告

目次

財産が未分割でも相続税の申告が必要です

実は、相続開始後に財産が未分割の状態であっても相続税の申告は必要になります。

そもそも、相続税の申告と納税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日(相続開始日)から10か月以内に行わなければなりません。

多くの場合、遺産分割が確定した状態で相続税の申告を行いますが、申告期限までに遺産分割が確定しない場合でも、期限内に相続税の申告をしなければなりません。

この場合、相続財産は各相続人が法定相続分に基づいて取得したものと仮定し、相続税を計算して申告・納税します。いわば、仮の状態で申告書を提出すると言えるでしょう。

理由としては、以下の2つが挙げられます。

① 遺産分割が確定していなくても申告期限は延長されない
② 期限内に申告をしないと相続税の軽減特例が使えない

また、①の申告期限が延長されないことにより、申告期限後に申告を行うと延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されるため、そのような事態を防ぐためにも遺産分割が完了していない場合でも期限内に相続税の申告を行いましょう。

財産が未分割で相続税申告する際の3つのデメリット

上述した通り、財産が未分割であっても相続税の申告が必要になりますが、財産未分割の状態で申告を行うと、財産の評価額や税額を減らす特例や制度が適用できないことがあり、結果的に実際の税額より高くなることが多いです。本章では、財産未分割で申告を行う際の主なデメリット3つをご紹介します。

小規模宅地等の特例が適用できない

小規模宅地等の特例とは、被相続人が自宅や事業に使用していた土地を相続した場合、土地の評価額を最大80%減額できる制度です。

しかし、財産が未分割の状態で相続税申告を行うと、この特例は適用できません。

特例の適用要件には、申告期限までに遺産分割が完了していることや相続税申告書の提出が含まれます。

基礎控除を上回る財産を持つ場合でも、この特例を適用することで土地の評価を減少させ、納税額が0になることも多いですが、遺産分割が完了していないと適用できないため、納税が必要になる場合があります。

配偶者の税額軽減が適用できない

配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続する遺産額が1億6千万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、相続税がかからない制度です。

ただし、この制度の対象となる財産は遺産分割が完了している財産に限られるため、財産が未分割の場合は適用できません。(一部が未分割の場合、分割済みの財産については適用可能です)

基礎控除を超える財産を持つ場合、この制度を適用することで相続税を軽減したり、0にしたりすることもできますが、遺産分割が完了していない財産については適用対象外となります。

その他にも、農地の納税猶予や非上場株式の納税猶予も期限後の手続きは認められないため、適用できませんので注意が必要です。

遺産分割がまとまらない場合の3つのステップ

上述のデメリットを踏まえ協議を進めても、どうしても遺産分割協議がまとまらない場合もあるでしょう。そういった場合の対処法を3つのステップでお伝えします。

「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する

遺産分割協議がまとまらない場合には、期限内申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しましょう。

この書類を提出することで、分割が確定した後に修正申告(更正の請求)を行う際、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」を適用することができます。

上記で説明した通り、これらの特例を適用することで税額に大きな差が出るため、必ず提出することをお勧めします。

申告期限までに遺産分割がまとまらない場合は未分割の状態で相続税申告書を提出することが多いと言えますが、その際には「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず提出しています。

【申告期限後3年以内の分割見込書】

提出する際には、1. 分割されていない理由、2. 分割の見込みの詳細の欄に財産が分割されていない理由と見込みの詳細を記載し、3. 適用を受けようとする特例の欄には該当する番号すべてに○を記入してください。

遺産分割協議を行う

期限内に一度相続税申告を行った後は、引き続き遺産分割協議を行うことになります。

申告を行ったとしても、分割が確定していないことに変わりはありません。

原則として、3年以内に分割が確定しない場合、「申告期限後3年以内の分割見込書」に記載した特例は適用できなくなります。

やむを得ない事情がある場合は税務署長の承認を受けて適用することも可能ですが、まずは申告期限から3年以内に分割を目指しましょう。

修正申告(更正の請求)を行う

遺産分割協議がまとまり、取得する財産が確定したら、相続税の修正申告(更正の請求)を行う必要があります。

各相続人の取得する財産が確定することで、各相続人が納めるべき税額が確定します。

そのため、未分割の状態で申告した税額より確定した税額が少ない場合は還付を受け、多い場合は追加で納税をすることになります。

前述の「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出している場合、3年以内に分割協議をまとめ、成立後4か月以内に更正の請求手続きを行う必要があります。

また、同書類で選択した特例を適用して修正申告ができることにも留意してください。

【参考】

国税庁ウェブサイト

相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事の監修者

宮川 英之 公認会計士・税理士

つなぐ相続センター代表。福岡県内で相続税、贈与税の相談から申告書作成、提出、税務調査対応まで一貫して手掛けている。

相続税・贈与税のご依頼・ご相談なら

つなぐ相続センター
目次
閉じる