新築マンション価格はまだまだ高い水準にありますが、そこに水を差す規制が話題となっています。
相続税評価額と実勢価格のかい離を利用した、いわゆる「タワマン節税」の規制に向けて、国税庁が1月30日に第1回となる有識者会議を開催し、議論が開始されました。
この有識者会議の資料では、福岡県の築22年の9階建マンションで、市場価格が3500万円のものが、相続税評価額では、1483万円となっている事例も掲載されています。
有識者会議資料
https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/0023001-051.pdf
財産評価通達による評価
タワマン節税を巡っては、税負担を著しく軽減させる事例に限って通達で認められた「総則6項」を用いて後出しで否認するという対応がとられてきましたが、評価ルールそのものを見直すことで抜本的な規制を図ります。
マンションは階数が変わったとしても住戸面積が同じなら固定資産としての評価額は変わりません。
その一方で、実売価格は眺望のよい上階になればなるほど高くなるため、高層階ほど実勢価格と評価額の開きが大きくなる傾向があります。これが、上記の福岡県の事例だと乖離率が2.36倍となるということです。
これを利用し、相続を見込んでタワーマンションの高層階を購入しておき、相続税を納めた直後に高額で売却するのが「タワマン節税」です。
あくまで合法な手段ではあるものの、当局はこれを税逃れ目的の行為とみなし、税額の軽減効果が著しい事例にターゲットを絞り、「総則6項」を用いて否認してきました。
この項目が適用されれば最終的には国税側の言い値が適用されることになります。
税制改正大綱で言及
令和4年12月に与党が発表した税制改正大綱では、「現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある」と見直しの必要性に言及し、「時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する」と明記していました。
令和5年1月30日に開催された第1回の有識者会議(上記資料参照)に出席した委員からは、「価格かい離はタワマンだけの問題ではなく、マンション全体の評価ルールを見直すべき」、「住宅購入者がマンションか一戸建てかを選ぶ際のバイアスとならないよう、急激な評価増は避けるべき」などの意見が上がっています。
会議では全体の方向性として、一部の税逃れの防止のみが目的ではなく、評価額と時価のかい離の是正を目指すことを確認しました。有識者会議は今後も複数回開催される予定で、その結論を基に相続税の財産評価基本通達が見直される見込みです。