相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈により取得した土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度で、2023年4月27日から施行されました。
この制度は、所有者不明土地の発生を予防するための対策の一つとして創設されました。相続土地国庫帰属制度では、相続または相続人に対する遺贈により土地の所有権または共有持分を取得した方が、その土地の所有権を国庫に帰属させることができます
【参考】法務省ウェブサイト
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
ただ、土地の管理や維持が困難な相続人にとって、不要な土地を手放す手段として期待されていますが、開始からの申請件数や結果を見ると、課題も浮かび上がってきています。
申請件数と国有化の状況
制度がスタートしてから2023年7月末までに、申請件数は2481件に達しました。
申請された土地の種類別の内訳は次の通りです:
- 田・畑:930件
- 宅地:889件
- 山林:391件
- その他:271件
しかし、実際に国庫への帰属が承認されたケースは667件にとどまっています。承認された土地の種類別内訳は次の通りです:
- 宅地:272件
- 農用地:203件
- 森林:20件
- その他:172件
却下と不承認の理由

申請が却下された件数は11件で、その理由は次のようなものでした:
- 9件:通路として利用されている土地(施行令第2条第1号)
- 2件:境界が明らかでない土地(法第2条第3項第5号)
また、不承認となった件数は30件です。主な理由としては:
- 12件:土地上に工作物や樹木が存在し、管理や処分を阻害する場合(法第5条第1項第2号)
- 10件:追加の整備が必要な森林(施行令第4条第3項第3号)
申請取下げのケース

申請が進行する中で、審査の過程で承認の見込みがないと判断され、申請者が申請を取り下げたケースもあります。333件がそのような取下げに該当します。
制度の進展
制度開始から約1年が経過した2023年3月末時点での状況は次の通りです:
- 申請件数:1905件
- 国庫帰属が認められた件数:248件
- 却下:6件
- 不承認:12件
- 取下げ:212件
国庫帰属制度の今後の課題
この制度は、相続人が不要な土地を手放す手段として有用ですが、実際には承認に至る件数が少なく、申請が取下げられるケースも多いです。土地の状態や法的要件が厳格に審査されるため、現時点で課題が多いことが見て取れます。今後の運用改善や、土地所有者への情報提供が重要となるでしょう。