福岡の相続税申告の税務調査の傾向と対策とは

相続税と税務調査

相続税の申告手続きの方法は全国共通ですが、税務調査の傾向や指摘される財産の種類は国税局の管轄地域によって異なります。

本記事では福岡国税局管内の相続税の申告状況と税務調査の結果から、申告手続きする際に注意すべきポイントを解説します。

 

福岡国税局の相続税の申告状況

国税庁は全国を11の国税局と沖縄国税事務所で管轄しており、福岡国税局は福岡県・佐賀県・長崎県を管轄しています。

福岡国税局管内の相続税の申告状況は、福岡国税局が公表している「令和元年分相続税の申告事績の概要」の資料に基づいてご説明します。

 

 

相続税の課税割合は全国平均よりも低い

令和元年に福岡国税局管内で亡くなった人(被相続人)は81,678人、そのうち相続税の申告書の提出に係る被相続人数は4,151人と、相続税の課税対象割合は5.1%です。

相続税については、平成27年の相続税法の改正で基礎控除額が大幅に引き下がり、従来2%台だった課税割合は、改正後5%前後で推移しています。

全国の相続税の課税割合は8.3%ですので、福岡国税局の相続税の課税割合は平均よりも低い水準です。

相続税の課税対象となった場合、亡くなった日の翌日から10か月以内に手続きしなければいけませんので、相続が発生しましたら被相続人の財産がどのくらいあるのか確認してください。

 

 

相続財産の比率が最も高いのは現金・預貯金

令和元年分の福岡国税局管内の被相続人1人当たりの課税価格は、前年比101.8%の12,576万円、税額は前年比104.7%の1,360万円と増加しています。

福岡国税局の相続税の申告で特徴的なのは、相続財産で最も金額比率の高い財産が現金・預貯金等という点です。

全国の相続税の申告においては、相続財産の比率が最も高いのは土地であり、現金・預貯金は2番目です。

しかし福岡国税局管内では、令和元年分の相続税の申告における現金・預貯金等の割合が34.9%と最も高く、土地は31.6%と2番目となっています。

相続税の申告事績

 

出典:令和元年分 相続税の申告事績の概要(福岡国税局)

https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/release/r02/sozoku_shinkoku/index.htm

相続税

出典:令和元年分 相続税の申告事績の概要(国税庁)

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf

 

相続財産の割合が高い財産ほど税務調査の対象となりやすく、現金・預貯金が占める割合が高い福岡国税局管内の税務署では、現金・預貯金の申告漏れの有無に重点を置いて調査することが想定されます。

実際、福岡国税局管内の相続税の税務調査で把握された、申告漏れ財産の26.9%(令和元事務年度)は現金・預貯金であり、最も申告漏れの指摘を受けている財産です。

 

相続税の税務調査状況

税務署

相続税の税務調査は実地調査と、実地調査以外で行う調査の2種類あります。

調査手法は異なりますが、相続税の申告について調べられることは同じであり、誤りを指摘されれば追徴課税を支払うことになります。

 

税務調査で指摘を受けた14.3%は重加算税が課されている

実地調査とは、税務署の調査担当者が自宅に訪れて相続税を調べる方法です。

令和元事務年度に、福岡国税局管内で行われた相続税の実地調査件数は430件であり、相続税の申告書は4,100件提出されているので、実地調査を受ける割合は10%程度です。

税務調査の実施件数は前事務年度比88.8%ですが、これは新型コロナウィルスで税務調査が一時中断した期間があったことが影響しており、通常の年であれば500件程度の実地調査が行われています。

同事務年度の実地調査で申告漏れなどにより非違事項があった件数は357件であり、これは税務調査を受けた人の83%は、非違事項(申告誤り)を指摘されている計算です。

また非違事項を指摘された人で重加算税が賦課された割合は14.3%と、7件に1件は重加算税の対象となっています。

前年比でも重加算税の賦課割合は2.6%も増加していますので、福岡国税局は相続財産を隠している人により重点を置いて相続税の調査していることがわかります。

 

実地調査以外の方法でも69.6%の人が申告誤りを指摘されている

税務署は実地調査以外に、文書や電話で申告誤りを指摘することもあります。

申告していない人に相続税手続きが不要なのかを確認したり、ピンポイントで申告誤りを指摘する際に用いられる調査手法です。

福岡国税局管内では令和元事務年度に351件の実地調査以外による調査が行われ、申告漏れなどの指摘があった割合は69.6%でした。

実地調査よりも非違事項の指摘割合は低いですが、それでも約7割の人が申告誤りの指摘を受けています。

 

 

税務調査を受けないための対策とは

相続税の相談と調査対策

税務調査で申告誤りを指摘された場合、本税以外に加算税・延滞税を納めることになるため、税務調査を受けないことが大切です。

申告誤りとして指摘されやすい事項が、相続財産の計上漏れと相続税の計算誤りです。

この2つポイントを無くせば、税務署は調査を実施する必要性が無くなりますので、税務調査を受ける確率は下がります。

 

被相続人の預貯金を正確に把握

相続税は、亡くなった人の財産すべてが課税対象です。

相続財産の把握漏れあれば相続税の申告漏れとなり、税務調査で指摘される可能性が高くなります。

税務署は銀行や証券会社など、全国各地の金融機関を調査することができますし、過去の居住や勤務履歴から、申告漏れとなっている金融機関が無いか調べ尽くします。

また預貯金の入出金の状況も過去にさかのぼって調べられるため、相続開始直前にお金を下ろし、そのお金を現金として相続税の申告書に記載していないと指摘される可能性もありますのでご注意ください。

 

評価額算出誤りは調査対象となる

不動産の相続

相続税は亡くなった時点の財産価値に応じて税額を計算しますが、不動産や株式は相続人が評価額を算出する必要があります。

たとえば土地は所在する場所や面積、形状によって評価額は違いますし、土地を複数所有している場合、評価額は土地ごとに計算しなければなりません。

また土地の評価額は1,000万円以上になることも珍しくなく、算出した評価額が1割違うだけで、納税額が100万円単位で変動することもあります。

過少に評価すれば税務署から指摘を受ける一方、過大に評価した場合、税務署が連絡してくることはありませんので、本来の納税額よりも多く相続税を支払うことになります。

 

税務調査対策は申告書提出前で決まる

相続税の税務調査は、申告書を提出した内容で実施するか判断されます。

申告した内容が間違っていれば指摘を受けますし、正しく申告していれば基本的に税務調査を受けずに済みます。

相続税の申告書の作成に慣れている相続人はいませんので、申告するのに少しでも不安がある場合は、1度税理士等の専門家に相談して申告方法や相続税対策を講じてください。